「……私は……いない、かな。」

「…………柑奈、まさかあんたまだ…?」








私のそう言う顔を横で見ながら

表情を曇らせるカナ。





私はそれに苦笑いをしながら
少しだけ 視線を下に下げた。









「……忘れようとはしてるの。
もう…絶対実らないって分かってるし。」

「………柑奈…。」

「…あははっ、長すぎるよね〜!
もうあれから1年も経つのにさ!」









私の言葉に

心配そうに顔を覗き込むカナに




私は小さく笑みを浮かべて、
気持ちを誤魔化すように そう笑う。









─────大丈夫。







あと少しすれば…きっと忘れられる。








私は心の中でそう言い聞かせながら
カナに笑顔を向ける。









「……勇さん、今どうしてるかな。」

「………。」










そして私は

お店が並ぶ方を眺めながら




ふと…そんな言葉を漏らした。








─────本当は 聞くつもりはなかった。








彼の話題なんて出さずに


彼のことを何も知らずに
帰るつもりでいたのに─────









(…………どうして)









どうして私は……

こんなにもあの人のことが
気になってしまうんだろう…。