…要くんは、今どうしてるんだろうか。
最後に会ったのは
私が街を出た あの朝で
それも朝で急だったから
少ししか話したりはできなかった。
それからメールはたまにするけど
声を聞いたり、顔を見たりするのは
やっぱり あれ以来。
どうしてるんだろう…。
(塾の皆も、先生達も…元気にしてるかな。)
早く会いたい気持ちを抑えながら
私はそのまま電車に揺られる。
……店長さんにも、会いたいなぁ。
(……………勇さんは…)
私はそこでふと…
これまで考えるのを避けていた
彼の名前を───頭で呟いた。
……彼は、元気にしてるだろうか。
きっとあの人のことだから
しっかりちゃんと、生活はしているんだろうけど…
(………怒ってる…かな。)
私が黙って出て行ったこと───
彼は、どう思ったんだろう。
私は そんなことも一緒に 考える。
……薄情な人間だと、思われたかな。
でもそうだとしても 仕方ない。
…私が、彼から逃げたんだもん。
私が勝手にいなくなったのだから
そう思われても…仕方ない。
「…柑奈?」
「!…ん?」
「いや、何かボーッとしてたから…。」
───そんなことを考えていたら
不意に横から声をかけられ、
私は思わず ハッとした。
疲れてるなら、寝てても良いよ。と
私を気遣ってくれるカナ。
私はそれに首を横に振って
「ありがとう」と、笑顔を向けた。
……やめよう。彼のことを考えるのは。
(もう、忘れるって決めたんだから…。)
私はそう思い直し、
再びカナと 世間話を再開した───。

