(…うん、これでよし。)









私は家に帰ってから


昨日した荷造りの確認をして、
トランクケースを そのまま閉める。







結構長く泊まるから

荷物がたくさん…。









(でも家にもいくつか服とか残ってると思うし…大丈夫だよね。)









私はそう思いながら立ち上がって

トランクケースも一緒に
その場に立たせる。









────地元まで、新幹線で1時間。








私は近くに掛けておいたコートを羽織って

そのトランクケースを持ち、玄関へ向かう。









(………髪、伸びたなぁ…。)









不意に見えた鏡を見て

私は静かに…そんなことを思った。







────街を出る前日に切った髪は
いつの間にか以前と同じくらいまで伸びて






まるで本当に





『あの日』の私がそのまま…

街に帰るような そんな感じに見える。








私はそんなことを思いながら


玄関で靴を履いて
荷物を全て 手に持った。







地元の駅では、親とカナが迎えに来てくれるらしく



私は少し嬉しい気持ちを抱きながら
玄関を出た。











(────大丈夫。)










きっと




彼には……会わない。











────そう自分に、言い聞かせながら。