「あ…要くん!」
「まさか会えるとはね。
北澤も今日が最後の日なの?」
「うん、そうだよ。」
要くんはいつもと同じように
私の隣にやってきて
私たちはそのまま 一緒に歩き始める。
───要くんはあの日以来
私とこうして鉢合わせた時に
肩に手を置くことをしなくなった。
私を驚かしてからかうことも
あの日を境に───しなくなったのだ。
「そうなんだ。
…それで、決まったの?」
「え?」
「大学。どこにするのか。」
要くんは小さく微笑みながら
私の顔を覗き込んで
私にそう尋ねる。
私はその言葉に
「あ…」と声を漏らして
そして小さく 縦に頷いた。
「……そっか。」
「…うん。」
「……どっちにしたの?」
要くんは静かに私にそう言って
小さく笑みを浮かべたまま
優しく…私の答えを待っていた。
私はそんな彼を見上げながら
淡く口角を上げて
彼に告げる。
「……行こうと思うんだ、地方。」
「………。」
「…親にも、そう言おうと思ってるの。」
私がそう言って
はは、と小さく笑うと
要くんは顔を前に向けて
少しの間…黙っていた。

