まだ6時だというのに
すっかり夜中と同じくらい暗くなっている外。
俺は手に持っていた白いマフラーを首にさっと巻いて
駅まで1人で歩いていく。
───こんなに緊張する日は、後にも先にも きっとないだろう。
あと少しであいつに会えるという
嬉しい気持ちと
これから 自分がする予定の出来事への
不安と、緊張。
結果次第では
もうこんな風に会うことも出来なくなることだって考えられる。
───でも
これ以上黙っていられる気も、自分でしない。
(……それに)
少しでも先延ばしにしていたら
あの男───柑奈のあの"友達"とやらに
先を越されそうな気もする。
それを黙って見ているなんて
俺には…出来ない。
(……早く会いてェな…。)
俺はそんなことを思いながら
駅の改札を通り過ぎ
ちょうどホームにやってきた電車に乗り込んだ。
そして少し混雑している車内に立つ。
…思えば、あいつと会うのも久々だな。
カラオケで会った以来
姿すら見かけることなく、とうとう今日。
夏に会わなかったのもあってか
少し、会えないことに耐性は付いていたらしい。
このくらいの会えない期間じゃ
そんなに飢えることもなくなった。
……まぁそれでも、会いてェのには変わりねェんだけど。
『次は××駅───、次は××駅───』
そんなことを考えていれば
あっという間に電車は駅に到着して
俺はぞろぞろと降りていく人混みに紛れて
一緒になって、ホームに降りる。
予想以上に多い人に
少し驚きながらも
仕方ないと割り切って
そのまま 改札を通り過ぎ駅を出た。
(……まだ6時半前か…。)
携帯で時間を確認して
俺は辺りを見渡す。
40分くらい早く着いてしまった。
まぁとりあえず、
先にツリーの前に向かって、柑奈を待とう。
そう思い、人の多い道を歩き出して
仲通りへと向かった。

