好きって言ったら、どうする?

▼勇side▼









「……そろそろ出るか。」










時計を見上げて、俺はベッドから静かに腰を上げた。







……時間は、午後6時過ぎ。








今から出れば余裕で着くのは間違いない。





少し時間を持て余しそうだが、
遅刻するよりはよっぽど良い。










(……変じゃ…ねぇ、よな。)










玄関に向かうと



そばにある全身鏡がチラッと視界に入って
俺はそこへ向かい合う。







この前買ったばかりの黒いコートに
シンプルなシャツと、ダメージジーンズ。







そして……











(……やっぱ良いな、これ。)










そう思いながら
自分の耳を 指でそっと触れる。







耳には

あいつから貰った───あの、ピアス。







失くしたくない一心で

大事な時以外は付けるのを避けていた これ。







特別な日である今日
とうとう初めて 耳につけた。






俺はそれを見て
やっぱり好みだと思いながら



自然に笑みを浮かべて

鏡から 顔を背ける。










(忘れ物ねェよな?
プレゼントは……よし、ある。)










靴を履いて家を出る直前


自分の持ち物を確認して
それから───静かに家を出た。