(何で………あいつ塾じゃねェの?)
俺がそう思いながら
電話中に 少し黙っていると
そいつも少し黙ってから
再び不意に、「あ!」と声を上げた。
「やっぱそうだよ!
今"北澤"って呼ばれてた!」
「────!」
確信をつく言葉を言われ
俺は思わず、電話を持ちながら
その場に立ち上がる。
そして近くにあったコートを手に取ると
電話の向こうへ告げた。
「──行く。」
「え?」
「今から行く。」
じゃ、と
戸惑う向こうに関係なしに
俺は電話を切って コートを羽織る。
そして適当に財布と鍵を持って
家を出た。
────柑奈とは、あれから会ってない。
お互い気まずくて
連絡を取らずにいたが
こんな偶然の機会があるなら…
行かないわけにはいかない。
(…中に入って、会えるかもわかんねェけど)
でももし会えたら
俺から…この前のことを謝ろう。
俺はそう思いながら
早足で駅に向かって歩き
地元を 後にした────。

