『っ………北澤、帰ろう!』












どこかで




聞いたことのある声が
あいつの名前を、そう口にした気がして





俺は思わずバッ、と 背後を振り返った。









そして







少し離れた道の向こうで




誰かが、誰かの手を引いて
走り去っていくのが小さく見える。












─────今のは













「……………柑奈……?」











まさか、と思って

俺は思わず反射的に
その名前を呟いていた。









…………まさか……な……











(俺の聞き間違いだろ。)











そう思いながら


俺は暖簾を持って、
金田の横を通り過ぎ、中に入る。











「…………。」











その時







金田がジッと俺を見つめていたことに







俺は全く


気づいていなかった────。











▲勇side END▲