「泣きたい時に泣いた方が、早くそいつのこと忘れられんだろ。」
「っ………。」
「まぁ、忘れたくねぇなら別だけど。」
とにかく、元気出せよ。と
俺はそうとだけ言い残して
荷物を持ち
目の前のエレベーターのボタンを押すと
タイミング良くやってきたエレベーターに
静かに乗り込む。
…内心
余計なお世話だったな、と思いながら
気恥ずかしかった。
……俺何言ってんだ、本当。
(………柑奈と 何かかぶって)
だから、放っとけなかった───なんて
そんなことは言い訳にならないだろうが。
そんなことを考えながら
不意に 前に視線を戻す。
すると
まだ玄関の扉を開けたままでいた金田が
俺を真っ直ぐ見ながら
エレベーターの扉が閉まる直前に
俺に向かって声を上げた。
「あ、ありがとう…!!」
それだけ聞こえた後
エレベーターの扉が完全に閉まる。
俺はエレベーターの中で
一瞬ポカンとして
それから
何だか更に気恥ずかしくなって
反射的に、軽く頭をかいた。
……はぁ、本当に何やってんだ俺は…。
(お前のせいだからな……柑奈。)
お前と会ってから 調子狂っておかしくなってんだ、と
俺は心の中であいつに文句を言いながら
バイクに跨り、エンジンをかける。
(─────早く終わんねェかな、夏。)
そして俺は
そんなことを思いながら
店まで、バイクを走らせた───。
▲勇side END▲

