鞄の中から
一応持ってきていた自分の歯ブラシセットを取り出して
そこで歯を磨いた後、顔を洗う。
(……にしても よく眠れたなぁ…。)
他人の家で寝させてもらって
こんなに普段通り目覚められるなんて
私にしては珍しかった。
いつもなら、友達の家でさえ
あんまり寝た感じがしないのに
…何だか
お兄さんの側で寝ている時
心から安心できていた気がする。
私はそう思いながら
髪の毛をもう一度綺麗に直して
お兄さんのいる部屋へ戻った。
洗面所から出ると
いい匂いが…鼻をかすめる。
部屋に戻ってみると、
もう机に料理が並べられ始めていて
私はそれらを見て
少し目を丸くする。
───女子の私より 料理上手。
「……お料理上手ですね…。」
「一人暮らしだし 普通だろ。」
ん、と言われ手渡された箸を持って
私とお兄さんは
机を挟んで 向かい合わせに座った。

