「………柑奈…。」

「っ!」











離れた唇から

無意識にそんな声が漏れて






柑奈が 静かに息を飲んだのが分かる。









そしてあいつは


顔を真っ赤にしながら
驚いたように目を見開いて





そのまま 部屋を出て行った。










───バタンッ、タッタッタッタッ!










扉が閉まって


柑奈が階段を駆け下りていく音が
小さく聞こえる。










そして少しして


静かになった部屋で
1人ベッドに座りながら




先ほど触れた唇に



そっと───手で触れた。











(…っ………や、ば……。)










未だ 熱のせいで
頭がぼんやりしているのもあるが




今のこの浮遊感は



きっと───熱のせいだけじゃない。











(…………何だ、これ…。)










頭がボヤッとして




鼓動がバクバク鳴って





すごく───息苦しい。











(…………重症……か…。)










以前から



自分の柑奈に対する
心境を、自分でもそんな風に思っていたが








どうやら……重症どころではないらしい。









俺はそのことに



ここにきてようやく───自覚した。