───でも、油断していた。













「……わ、私も
勇さんといると 安心します……。」













まさか







こいつから


こんな言葉が返ってくるなんて
思ってもいなかったんだ。











俺の言葉に応えるように

自分の本音を漏らしたのか






伏せている顔が
赤くなっているのが、すぐ分かった。










(─────っ。)










それに気づくと





自分の心臓が

バクバクと鳴り始めるのが分かって






血流も



逆流しているんじゃないかと錯覚するほど
ドクドクと 激しく巡り始める。












─────もう、言葉は出なかった。












「あ、えと…っ!じゃあ私もう帰りますね!!」













───ただ、











そう言って


俺から逃げるように
慌てて立ち上がった柑奈の後ろ姿を見て









その気持ちにかぶさるように





あの不安が───押し寄せてきた。

















『勇さん、じゃあまた!』















そう言って






夢の中で俺から去っていった

柑奈の後ろ姿と───シルエットが重なって見えたから。













すると
途端に苦しくなって









俺は───
思わず、手を伸ばしてしまった。














(……嫌だ……行くな……っ。)













───俺の前から、いなくなるな。












そんな風に思うと同時に






『手放したくない』と

無意識に動いた気持ちに







気づいたら

あいつの腕を引っ張っていて───















「─────。」















そのまま






目を閉じて


あいつに……唇を重ねた。