それから
お風呂から上がって
そばに用意されていたバスタオルを使い体を拭いて、着替える。
そして髪の毛をだいたい拭き終えると、
私は脱衣所から出て
お兄さんのいる部屋に向かった。
「…あの、お風呂あがりました。」
「ん。」
部屋に戻ると
お兄さんがベッドに寄りかかりながら
床に敷かれた布団の上に座り、
煙草を吸っていた。
どうやら脱衣所から出て感じた匂いは
お兄さんの仕業だったらしい。
「悪い、すぐ消す。」
「え?あ、いや、お構いなく…!」
別に咎めているわけでも
嫌な顔をしたわけではないのに
お兄さんは、私が戻ってくるや否や
吸っていた煙草を灰皿に押し付けた。
そしてすぐに換気扇を回し、
少し窓も開ける。
……ここでもまた、優しい。
そしてお兄さんは少し経った後
開けていた窓を閉めて、
敷いていた布団の中に体を横にし始める。
(───あ、あれ?)
「え、あの、そっち私じゃ…。」
「いや、お前はベッド。」
「…え?」
私が布団に入ろうとするお兄さんへ
そう尋ねると
あっさりとそう返されて 唖然とする。
お客の私が普通、床で寝るべきなのでは?
瞬間的にそう思って
私はお兄さんに抗議した。
しかし
そう思って「いや、私床で…!」と言うも
お兄さんは譲ろうとせず、
そこから退く気配を示さなかった。
「もう寝るから、早く入れ。」
終いにはそう告げられてしまい、
お兄さんは部屋の電気を消そうと手を伸ばす。
そこまで言われたら…反論しにくい。
私はここでやっと
仕方なくベッドにあがる決意をして
渋々、布団の中に体を横にした。
「あの…ありがとうございます。」
「ん。」
私がお礼を言うと
お兄さんはまた短い返事をして
私が布団の中に入ったのを確認し
そのまま 部屋の電気を消す。
───これが、彼との出会い初日目。

