(……あそこに行けってこと?)
指差された先---
お客さんのいるカウンターの1番奥には
空いてる席があって、
私は彼の指示に従って そこへ座る。
すると
厨房越しに、
私の前に お兄さんがやってくる。
「証言どーも。」
「い、いえ。別に…。」
彼はそう言葉を交わすと
「ちょっと待ってろ。」と言って
すぐに私の前を離れていった。
───そして、それから十数分後。
もともとお店にいたお客さんが
ぞろぞろと帰り始めて
とうとう-----店内の客は私1人になった。
そしてそうなったと同時に
店長さんが、暖簾を下ろしにかかる。
…どうやら、閉店の時間らしい。
「おいユウ!お前あの女の子こんな時間まで居させとく気か?
家の人心配すんじゃねーの?」
「いや、あいつ家出らしいんで
今日家帰らないみたいっす。」
「…はぁ?!」
えぇ?!と
驚きの声を上げて
暖簾を持ちながら こちらを見る店長。
(---っ、あ……。)
私はその時
店長の反応を見て 内心、焦った。
───家に送り返されるかも。
そんな風に思って
私は思わず店長さんから目を逸らして
視線を少し 下へ向ける。
でも
そんな私の不安を退ける言葉が、
あのお兄さんから出された。

