「……なぁ。」











───真冬の海を





2人で一緒に
黙って眺めていたら、


不意に…隣に座る彼が口を開いた。






波風に吹かれながら
彼を見上げて


私は視線で、返事をする。










「……もしも、の話だけどよ。」









彼は


何だか少し寂しそうな声で
私を真っ直ぐ見つめながら、呟いた。








そして







寒い冬風が弱く吹いて

互いの頬を冷たくする中───











「…もし、俺が好きって言ったら
…お前 どうする?」











─────彼が静かに そう呟いた。







彼は



そう言いながら、
驚いて目を見開く私を 真剣に───



だけどどこか切なげに



少し目を伏せて
真っ直ぐ見つめてくる。









……その言葉に




私の心臓は、嫌に音を立てて
高鳴りを示す───。










「……何言ってるんですか。」










私はそれを知られないように
彼に隠しながら




薄く笑みを浮かべて

静かに─────返事を返した。










「勇さん…彼女いるじゃないですか。」











───そう。ただ、そう返した。









それを聞いて

彼は切なげな視線を 一瞬だけ下げた。





しかしすぐに私から顔を背け

また前に 視線を戻す。










「……そうだな。
…確かに、ありえねェな。」

「…はい。」










お互いにそう言いながら


どこか寂しい余韻が残って
私は…胸を痛めた。










───何で、そんなこと言うの?










(…諦めるって、決めたばっかりなのに。)








私はそう思いながら

静かに目を閉じて




膝に置いた手を ギュッと握る。









そんな私を




彼は黙って 見つめていた───。