沢木に視線の先に、メッセージボードの文字が点滅していた。
~口説き文句からプロポーズの言葉まで~各種<言葉>レンタルショップ
何だろう?<言葉>のレンタルなんて、新種の商売か何かか?
沢木は、興味津々でその店の扉を押した。

「いらっしゃいませ~」
一見、女子中学生、でもよくよく見ると30歳前後の不思議な雰囲気を持った妖精のような笑顔を斜め右に傾げて、女性が声をかけ来た。
髪を三つ編みにし、二本にまとめ両肩へたらし、薄いピンクの口紅だけの化粧が彼女を一見少女のように見せているのだろう。

畳にしたら6畳程度の広さの狭い店内には、ショーウインドウがあるわけでもなく、正面にカウンターがあり、カウンター越しに、その女性が独り腰掛けているだけだった。

特に商品が陳列されているわけではないこの店では、客は、その女性との会話以外にする事は何もないだろう。

「このお店って、何屋さんなんですか?」
沢木は、当然の質問をしてみた。
「<言葉>をお貸ししています。そう、人にはそれぞれ、思ってはいるけどイザそれを云おうとすると、口に出来ない苦手な言葉ってありませんか?」