帰りのHRが終わり、足早に物理室へと向か

う。

まだ早かったようで、山田先生は来ていな

かった。

「まだかなー」と呟き、壁に寄りかかると

スマホに目を落とす。

しばらくして顔を上げると目の前に山田先

生が立っていた。

「うわっ、びっくりした」

思わず声が出た。

「お前どんだけ夢中なってんの」

と笑いながらも鍵を開ける先生。

「入れ」と一言だけ言い、いつものキャス

ター付きの椅子に座る。

「失礼しまーす」と言いながらこの前と同

じ一番前の席に着く。

プリントを渡され、少し解いてみる。

でもさっぱり分からない。

「お前、物理嫌いか?」

突然先生に言われ顔を上げる。

「え、まぁ…」

曖昧な返事をした。

「そっか」と言った先生の顔はどこか悲し

そうだった。

それからしばらく沈黙が続いた。

全く分からないプリントとにらめっこして

いると、先生が

「分からんだろ?教えてやるよ」

そう言い椅子ごとこっちに移動してきた。