―――「おー、ファロル!」

青年・・・レクトはにこやかに微笑みながら、手を振ってきた。
ファロルはその光景を見ると、彼ににっこりと微笑み返しながら、レクトに駆け寄る。

「?どうしたファロ―――ぅぐあッ!」

先ほどの笑みはまるで嘘のようにレクトを睨み、ファロルは言いかけたレクトの頬を思い切り殴りつけた。
彼の身体が宙を舞い、物凄い勢いで落ちる。
・・・数秒後、レクトは殴られた頬を押さえながら、顔をバッと上げた。

「何すんだいきなり!!」

「うるせえ!心配して来て見れば何だお前は!
ぴんぴんしてるどころかにこにこ笑いやがって!」

「何がだ!無事だったんだぞ!?もっと喜べ!
というかそもそもお前のせいで俺まで巻き込まれたんだぞ!」

レクトにぴしゃりと言われ、ファロルは大きな溜め息を吐いた。
そして長い指を彼の鼻先に吐き付け、ファロルは眉を吊り上げる。

「巻き込んだことは謝る、だがいくら何でも礼儀っつーもんがあるだろ!」

「お前に礼儀とか言われたくない!」

こうなったら堂々巡りだ、と察したレクトは、あるいい方法を思いついて立ち上がり、彼の肩を叩いた。

「それよりファロル、移動するぞ!」

狙い通り、ファロルは大きな目を更に大きく見開いてレクトを見た。
・・・実に単純だな、とレクトは思ったが、それを口にするとさっきの続きになりかねないので、それは伏せた。

「どこに?」

「さあ?それはお前が決めることだろ?
どちみちこの街にはそう長くいられない。出るなら早くした方がいいだろ?」

「あ~・・・」

納得したのか、ファロルはゆっくり頷いた。