隣の転校生。

次の国語も、沙耶とずっと話していた私は
テスト前だというのに、ノートをとっていなかった。


そして次の時間、数学。しかし、ロッカーを見た私は唖然とした。


「…ない…」


…結論からいえば、数学1式がない。


「ああああああ忘れたああああああ」


私は人目も気にせず叫んだ。もちろん理由があるわけで。


教科書を忘れた…ということは、隣の席のひとに見せてもらうことになる。


(…そ、そんな、まだよく知らない男子に…)


同じクラス、学年の男子をどこか避けているところもある上に、全然話したことのない男子となんて…


「沙耶ああ〜…」


「どーしたの、そんな暗い顔して…なんかあったの?」


沙耶は心から心配してくれているようだが、


「……数学忘れた」


言った途端に、


「あはははははっ」


涙を流しながら沙耶が大笑い。


「…なっ、なんでそんな笑うの?!私にとっては一大事なんだけど〜?!」


「ごーめんごめん。朱らしいとは思いつつも…あは、あははははっ」


「もーお。沙耶は社交的だしいいけどさあ?」


「…でもとにかく貸してもらうしかないんだからさ、ほら、いま言っちゃいなよっ」