エメラルド・エンゲージ〜罪の葉陰〜


マジュは今日も昨日と変わらずに静かに目を閉じて、人形のように眠り続けている。


『お父様……!』


『愛しているわ、お父様』


二度の「逆流」の中で見た、二つの光景。

ハルヒコ様とマジュのあいだに、間違いが起こるはずはない―――トウジ様は、そう信じているみたいだったけど……。


でも、少なくとも、マジュがハルヒコ様に対して親子以上の感情を持っていたのは事実なんだろう。

状況から考えて、一度目に見た光景は夢のはず。

二度目の光景は……夢なのか、本当にあったことなのか、どっちだろう。

いや、どっちにしても同じことだ。


(マジュはハルヒコ様にキスをした……。

それが現実じゃなくても、「したい」と願っていた。

それが、マジュの気持ち)


母親を亡くしたばかりの頃から抱いてきた義父への想いが、成長するにつれいつしか生々しい願望を生んだ―――それがあの、一度目の逆流の光景と考えれば納得もいく。