ハルヒコ様の手は、ベッドに横たわるマジュの手を握りしめている。
何の反応も返すことのない、白く冷たい娘の手を。
ハルヒコ様を病ませているのは、娘に対する後悔だ。
血の繋がらない娘に対する、記憶を歪ませるほどの後悔―――。
(2人が実の親子じゃなかったことには、そこまで驚いたわけじゃない。
そうかもしれない、とは思ってたし……。
それに、たとえ実の娘じゃなくてもハルヒコ様はマジュを大切にしてて、マジュがこんなことになって、傷付いて……
それは私にもわかる)
だけど……その娘のために、記憶までねじ曲げてしまうなんて。
血の繋がらない娘に対して、そこまで父親としての愛情を持てるものなの?
だって、血の繋がった実の父親でさえ、娘を絶対に愛してくれているものだとは限らないのに……私と私の父みたいに。
そういえば『花の庭』にいたころ、ねえさんの恋人だった男にやたらと私に自分を「お父さん」と呼ばせたがる人がいた。
血が繋がっているから家族なんじゃない、心が繋がっていることが大事なんだ、なんて言って……。


