エメラルド・エンゲージ〜罪の葉陰〜


そう決めて、私は部屋を出た。


でももしかしたら、ルイさんはいなくても別の人物がいるかもしれない……


そんな気がしながら、私はそうっとマジュの部屋のドアを開けた。

入り口からは誰の姿も見えない。

でも、ベッドに近づいたところで、私は足を止めた。

ベッドサイドに、ハルヒコ様の姿があった。

椅子に座り、上半身をマジュのベッドに預けるようにして目を閉じている。

眠っているみたいだ。

私が入ってきた気配や物音にも気付かないらしく、目を覚ます様子はなかった。

ハルヒコ様がこの部屋でマジュに付き添っていること自体は、べつに珍しいことじゃない。

けれど彼の姿を目にした瞬間、ドキンと小さく心臓が跳ねた。


(ハルヒコ様……)


出ていくべきか迷ったあと、私は結局、足音をたてないようにして彼に歩み寄った。

ハルヒコ様のことは私に任せて―――とトウジ様には言ったけれど、実はこの三日間、私はまだ一度もハルヒコ様に対して力を使えていないのだった。