いや、マジュが生まれる前にマリエの元を去り、それからまったく関わりが無いのは私たちも知っている。
その名前が出てきたのは、ただの話の流れだったんだか……。
ハルヒコはその話を、妙に不思議そうな顔で聞いていた。
そして、言ったんだ。
『マジュの父親は僕だ』と。
私も兄たちも、ハルヒコはまだぼんやりしていて話をちゃんと聞いていなかったんだろうと思い、彼に説明したんだ。
おまえは立派に父親をしている、だが今言っているのは血の繋がった父親、マリエの昔の交際相手の話だ、とね。
しかしハルヒコは、私たちの言葉の意味が理解できないようだった。
私たちは不審に思って、ハルヒコを問いつめた。
その結果――ハルヒコは自分の記憶から、マジュがマリエの連れ子だという事実を消してしまっていることがわかった。
『マジュは自分とマリエの間に生まれた、自分の実子』だと……そう思い込んでいたんだ。


