「ハルヒコからこの家を出ていくすすめを受けたのがショックだったようだ。
状況を聞く限りは、衝動的な行動だったのだろうと思う。
……しかしどうであれ、以来マジュはあの通りだ」
トウジ様は深くため息をつき、感情を制御しようとするように、手の平で額をおさえた。
「ハルヒコはそのことで、ひどく取り乱した。
血は繋がらないとはいえ娘のことだから、当然だろうがね。
泣き崩れながらずっと嘆いていた……『自分が本当にマジュの父親なら、こんなことな起こらなかったはずだ』と。
マジュのためを思ってした提案が、マジュを傷付けた。
ハルヒコは、自分の父としての至らなさがこんな事態を招いたと考えたんだろう。
いや、実父であれはそもそも娘との間に噂などたたなかったはずと考えたのかもしれない。
とにかくその頃のハルヒコは正気じゃなかった。
そして、ようやく少し落ち着いてきた頃だ……私たちが『それ』に気付いたのは」


