「『ハルヒコ・カンバラは、義理の娘と恋人関係にある』
―――財閥関係者の中で、そんな噂話が囁かれるようになった。
……いや、そんな大げさな話じゃない。
義理の親子ということで好奇の目を向けられやすかったところに、連れ立って社交の場に赴いた時の仲睦まじい姿などが、下世話な人々の想像力をかきたてたというだけのことだ。
二人には何の非もない。
何をバカな、と笑って済ませればいいことだった。
……けれど、私にはそれができなかった」
トウジ様は悔やむように目を伏せた。
「その頃、マジュは18になっていた。
女学院高等部の三年生だ。
もう子供とばかりは呼べない年齢。
それに……私が言うと語弊があるかもしれないが、マジュは美人だった母親に似て、なかなか美しい娘に成長していた。
ハルヒコと並ぶと、まるで恋人同士に見えることもあるくらいだった。


