「長くなるかもしれないが、いいかな?」

私がもう一度頷くのを確認して、トウジ様は語り始めた。



「……マジュの母親、マリエとハルヒコが結婚したのは、今から十年前のことだ。

マリエはハルヒコの大学時代の恩師の娘でね。

当時25だったハルヒコより五つ年上のシングルマザーだった。

家柄的にも経歴的にも、おまえにはもっとふさわしい女性がいるはずだと親戚中が結婚に反対したよ。

だがハルヒコは自分の意思を曲げずマリエと一緒になり、10歳だったマジュを養女として籍に入れ、この家で三人で暮らし始めた。

私も最初はずいぶん心配したものだが、それが取り越し苦労だったと思えるくらいには、三人は幸せな家庭を築けているように見えたよ。

マリエは少し物言いはキツイがよくハルヒコを支えてくれていたし、マジュはハルヒコによく懐いていた。

ハルヒコ自身、夫として父として、よくやっていたと思う。

身内の贔屓目かもしれないがね」