少しの沈黙の後、トウジ様は気持ちを固めた様子で口を開いた。
「―――マジュは、マリエの連れ子でね。ハルヒコとの間に、血の繋がりはないんだよ」
「……はい」
「写真を見たなら、改めて説明するまでもないかもしれないが。そうでなくても、賢い君なら薄々察していたかもしれないね」
「いえ。ただ……ハルヒコ様とマジュ様の年齢差が、ずいぶん少ないように見える……とは、感じていました」
「はは、そうだな。マジュは今、18歳……いや、あれから二年たっているんだから、もう二十歳か。
ハルヒコとの年の差は15だ。確かに、親子としては年が近すぎるな」
二十歳……私より五つ年上だ。
眠り続けるマジュが実年齢よりも幼く見えるのは、事故にあった時の年齢のまま時間が止まってしまっているせいかもしれない。
ずっと寝たきりならば、無理もないだろう。
「リイナ、今日は君にそれを聞いてもらおうと思って来たんだ。ハルヒコとマジュの話……いや、ハルヒコ家族の話と言った方がいいかな」
はい、と私は頷く。
トウジ様が、わざとハルヒコ様の留守に訪ねてきたのは何となくわかっていた。
ハルヒコ様の留守の方がするのに都合がいい話、それはハルヒコ様自身についての話だろうということも。
「ハルヒコを頼む」と囁いたあの意味を、彼は今夜私に教えに来たのだ。


