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『原石園』は、首都圏外で暮らす「下層」の住人たちが義務として首都へ引き渡した〈エメラルド〉を教育する施設だ。

〈グリーン〉を欲しがる上層階級の人々の眼鏡にかなうよう、原石を磨き上げて宝石にする工場、といえばわかりやすいだろうか。

能力の開発訓練や教養を身に付けるための授業が行われ、客は気に入った〈グリーン〉を買うことができる。

首都に引き渡す義務があるのは〈エメラルド〉だけのため、基本的に〈エメラルド〉しかいない園の中で、〈リーフ〉の私は異質だった。

まず、見た目からしてちがう。

〈エメラルド〉たちは、どんな親から生まれようと、皆生まれつき金髪に緑の目をしている。

〈リーフ〉の私は、目の色は後天的に緑色になっていたけれど、髪の色は親から受け継いだままの黒髪だった。

さらに私は11歳で中途入園してきたうえに、それまで暮らしていたのが首都の一番外れ、上層と下層をわける「境」と呼ばれる街の娼館ときている。

『園』の〈エメラルド〉たちは、赤ん坊の頃からここで〈グリーン〉としてのエリート教育を受けてきた少年少女だ。

中途入園者というだけでも驚いたろうに、娼館から来た黒髪の〈リーフ〉なんて、とても自分たちの仲間とは思えなかっただろう。