エメラルド・エンゲージ〜罪の葉陰〜


「下の書斎に仕舞っていた気がするんだけど。でも、前にこの部屋に移す本を箱に分けた時に混ざってしまったのかな?」

ここを整理していた使用人の誰かが見つけた後、この上に置き忘れたのかもしれないね。

ハルヒコ様はあまり不思議がる様子もなく、そう結論をつけた。

そうですね、と私もうなづく。

彼がそう言うんなら……そうなんだろう。

「ごめんなさい、旦那様。ここに置いてあったものだから、私、勝手に見てしまって……」

「かまわないよ、見られて困るような物じゃないんだから。ああ、そういえばリイナには妻のことを何も教えていなかったな」

「はい……この方が奥様のマリエ様なんですね。とてもお綺麗で、素敵な方」

写真を見ながら私が言うと、ハルヒコ様は少し気恥しそうに笑った。

「うん、素敵な人だったよ。気が強くて、しっかり者でね。君にも会わせたかったなあ」

「はい、私もお会いしたかったです。……マジュ様も、とってもかわいらしいですね。お人形さんみたい」