エメラルド・エンゲージ〜罪の葉陰〜


(これ……)

私は引き込まれるようにその写真をのぞきこんだ。

背景からして、スタジオのような場所で撮影したものらしい。

そこに、タキシードを着た青年が立っている。

ハルヒコ様だ。

今より少し若いけれど、確かに彼だ。


そして彼の隣には、白いドレス―――ウエディングドレスを着た、きれいな女の人。


扉紙の裏、写真と見開きになっている面に、文字がつづられている。

成婚を祝福する言葉、日付、それから、ここに写る二人の名前。



ハルヒコ・カンバラ

マリエ・カンバラ―――



(この人が、亡くなられたマリエ奥様なんだ)


これは、ハルヒコ様夫婦が結婚した時の記念写真だ。


初めて見るマリエ奥様は、ハルヒコ様の隣に立っても見劣りすることのない、なかなかの美人だった。

くっきりとした紫色の瞳と尖ったあごのラインが、少し気の強そうな印象を与える女性だ。


けれど、私の視線を釘付けにしたのは、彼女ではなかった。