エメラルド・エンゲージ〜罪の葉陰〜


カンバラ家はもともと鉱山事業で財を成したこと、それにこの家の主人のハルヒコ様が今現在鉱石を扱う事業に携わっていることもあってか、書庫には地学の本や鉱物についてなどの図鑑がたくさん置いてある。

たまたま手に取った一冊の表紙の、きれいな蛍石の写真に心惹かれ、内容も初心者向けだったので読んでみようと部屋に持ち帰った、つもりでいた。

(ああ、でも何冊も手に取って棚に戻してをくりかえしたから……あの本も戻したのに、持ってきたとカンチガイしてたのかな)

考えてみたら、そんな気がしてきた。

そうだ、勉強は書庫のカウンターですることにして、行ったついでにまたあの本を探せばいい。

思い立って、私は机の上の本とノートを持ち、部屋を出た。



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