この家の屋根裏は書庫として使われていて、私も自由に利用していいことになっていた。
屋根裏、といっても暗くて狭い物置きみたいな場所ではなくて、中庭を見下ろせる明るい窓辺に沿ってカウンター机と椅子が設置された、ちょっとしたくつろぎの空間になっている。
三方の壁は上から下まで本棚になっていて、カンバラ財閥の創始者の自伝や財閥関係者の著書、事業に関する本、他にも家人が読まなくなったらしい小説や絵本、図鑑などもおさめられていた。
私が今借りているのは三冊。
財閥創始者の自伝に、語学の勉強にと思って借りた英文小説。
それから―――
(あれ?)
机の上を見て、私は首をかしげた。
ブックスタンドに並んでいる本は二冊だけだ。
おかしいな、もう一冊、鉱石図鑑を借りてきたと思ったのだけれど。


