エメラルド・エンゲージ〜罪の葉陰〜



『ハルヒコを、頼む』


わざわざハルヒコ様に聞こえないように、私の耳に吹き込まれた言葉。

(マジュを、ではなくて、ハルヒコ様を?)

確かにハルヒコ様はマジュのことで不安定だ。

トウジ様からすれば、姪のマジュと同じくらい弟のハルヒコ様のことも心配なんだろう。

誰かが支えてあげてほしいと思うのもわかる。

もちろん私は、〈グリーン〉としてハルヒコ様を支えるつもりだ。

マジュの回復は彼の心の回復に繋がるはずだし、彼の心に直接治癒の能力を使ったっていい。

主人に対して出来ることを惜しむつもりはない。

だけど―――あれは、私への念押しだったのだろうか?

違う気がする。

何かもっと、意味ありげな響きだった。


(何だか少し、後ろめたいものがあるような……)