***
―――どういう意味、なんだろう。
自分の部屋に帰ってから、私はずっとそれを考え続けていた。
ベッドに寝転びながら、すでに何度もめくってみた冊子をもう一度めくってみる。
若者向けアクセサリーの会社のカタログのように言いながら、トウジ様から手渡されたそれ。
気付かないまま受け取ったけれど……それは男性用の高級腕時計のカタログだった。
表紙にはっきりと腕時計の写真が使われているから、たぶん、間違えて渡したわけじゃない。
そもそもお土産の話自体がカモフラージュだったんだろう。
私に手渡せるなら何でもよかったのだ。
不自然にならないように、私に耳打ちできる瞬間を作るために。


