そうしている間も、そのあとに三人でマジュのところへ行っている間も、トウジ様が時折私を「観察」しているのがわかった。
私は視線を感じるたびに、(ほら、私を正当に評価してよね)と心でつぶやきながら完璧にふるまって見せた。
「マジュのこと、安心したよ。リイナ、姪のことをよろしく頼む」
帰り際、乗り込んだ車の中から、トウジ様は見送りに立つ私とハルヒコ様に声をかけた。
「ハルヒコ、お前はくれぐれもリイナに無理を言うんじゃないぞ。いくら優秀でも、まだ年端のいかない女の子なんだ」
兄から念を押され、「わかってるって」とハルヒコ様が苦笑する。
トウジ様はそんな弟に片眉を上げて見せてから、私のことを手招いた。
「そうだリイナ、君みたいな子がいるんなら次から手ぶらで訪ねるもの気が利かないだろう。うちのアクセサリー部門の子会社にも若者向けを扱うところが確か……」
言いながらトウジ様は、隣の座席に置いてあった冊子を手にして私に渡そうとする。
「いえ、私はそんな……」
遠慮する私の手を、「いいから」と強引にトウジ様が掴む。
ずうずうしく見えないといいけど、と思いながら私が冊子に手をかけた―――その瞬間、彼がその手を、さらに自分のほうへと引き寄せた。
同時に彼が、車の窓越しに私のほうへ身を乗り出す。
(えっ……)


