エメラルド・エンゲージ〜罪の葉陰〜


「いや、ハルヒコが〈リーフ〉の子を引き取ると聞いた時には驚いたがね。マジュは快方へ向かっているんだろう?腕は確かなようだし、これだけ可愛らしければ、ハルヒコが気に入るのも無理はないな」

「そうだよ兄さん、この子は僕の見つけてきた女神だからね。うらやましいだろう?」

トウジ様に茶化されたハルヒコ様が、冗談めかして私の肩を抱いて笑った。

ここ数日のハルヒコ様は、よくこんな風に冗談を言ったりいたずらっぽく笑ったりする。

その反対で、後悔にふさぎこむ姿を見ることはなくなった。

私がマジュを治せると分かってから、心に余裕ができたみたいだ。

「女神か……。ハルヒコお前、彼女にあまり重圧をかけすぎて困らせるんじゃないぞ。リイナ、この男が度が過ぎるようなら遠慮なく私に言いなさい」

「いえ、ハルヒコ様にはとてもよくしていただいています。それに私は、ハルヒコ様のご期待に応えるためにここへ来たんですから」

「はは、頼もしいな」



私たちはしばらくそこで立ち話をした。

マジュの治癒にかかる時間のこと。

私が『原石園』でどんなことを学んできたか。

それから、トウジ様がカンバラ財閥の本社役員であること。

そこから話は本社やハルヒコ様の会社の話題に及んだけれど、ハルヒコ様はその話題に対して他人事みたいに「へえ」とか「そうなんだ」と相槌をうっていた。

休みの日にまで仕事の話を聞きたくなかったのかもしれない。

トウジ様は弟のそんな態度に苦い顔をして、でも何も口には出さなかった。