エメラルド・エンゲージ〜罪の葉陰〜


「やあ、君がリイナか。なるほど、ハルヒコの言う通り、宝石のようなお嬢さんだ」

ハルヒコ様の後ろにいたスーツ姿の男性が、私に手を差し出してきた。

「初めまして、リイナです」

握手を交わしながら、私は、ハルヒコ様と同じくらい背の高いその人―――トウジ・カンバラを見上げた。


兄弟だけあって、ハルヒコ様とよく似た、人を惹きつける容姿をしている。

ルイさんと同じくらいの年齢だろうか。

後ろになでつけた鳶色の髪と、高い鼻梁にかかる細いフレームの眼鏡が知的な印象だ。

ハルヒコ様は「おじさま」というには若すぎる雰囲気だけれど、この人は「素敵なおじさま」と呼ぶのがふさわしい感じ。


けして悪い感じを受ける人じゃない……だけど、何だろう。

にこにこ笑って私のことを見ているはずなのに、眼鏡のレンズの奥の鳶色の瞳には、温度がないように見えた。

冷たい……ちがう、これは冷静さだ。

この人は怖いくらいに冷静に、私のことを観察している。


(嫌悪でも、好奇心でもない……私を純粋に値踏みしてる)


それに気づいて、私は改めて背筋を伸ばし、彼に向けて笑顔を作った。