天気のいい午後、初夏の風がきもちいい。
ふと庭を見下ろすと、車がとまっているのが見えた。
ハルヒコ様の車ではないみたいだ。
使用人やルイさんは関係者専用の駐車場を使うから屋敷の表に車を置いたりしないし、お客さんでも来ているのだろうか。
そう思った時、リイナ、と私を呼ぶ声がした。
首を巡らせて声の主を探すと、生垣に囲まれた迷路のような小道の中から、ハルヒコ様が手を振っているのが見えた。
彼の隣には、もう一人男の人が立っている。
「リイナ、ちょっと下りてきてくれるかい?」
手招かれ、私は「はい」とそちらへ返事をして、家の外へ向かった。
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