息遣い、感触、体温。
マジュが感じたそれ―――感じたということになっているそれは、あまりに生々しく、現実感があった。
マジュが感じたすべてが私に流れ込んできたとき、まるで私がそうされているみたいな錯覚を覚えるほど……。
肌を這う手、濡れたくちびる。
身体を割って入ってくる、私が知るはずもないその熱量―――。
(ハルヒコ様……っ)
欲望に燃える鳶色の瞳が脳裏によみがえり、ぞくんと身体が震えた。
熱い吐息をこぼしそうになるのをグッと飲み込んで、私は頭を振る。
だめ……ちがう。
あれはすべて夢。
ハルヒコ様は、あんなことしない。
私は彼のことをほとんど知らないけれど、それでも彼を見ていれば、娘と関係を持てるような人でないことはわかる。
マジュのために私を『原石園』から引き取ってきたハルヒコ様。
時間を見つけてはマジュの部屋を訪れて、眠るマジュに寄り添い、その髪を撫でながら彼女に話しかけるハルヒコ様―――。


