でも。
マジュから流れ込んできたあの光景が、現実にあったものだとは限らない。
妄想、夢想、空想、眠りながら見る夢―――心に刻みつくものは、現実の記憶以外にもたくさんある。
そのうえ、マジュの心は外の世界と二年も接触していないのだ。
心の内側でそれらのものが元の姿をとどめなくなっていたとしても、不思議ではない。
だからあれは……マジュの夢だ。
私が見たものは、長い眠りの中で彼女が作り上げた、虚構。
肥大したたくさんの夢の中から、あのときたまたまあの夢が私の前に現れただけ……。
でも……。
(父親に抱かれる夢……)
虚構でも、無意識に作り上げたものでも、そんな夢を見るものなのだろうか?
少なくとも、私には考えられない。
それに。
(あまりに、リアルだった……)


