マジュが事故にあってすぐの頃はこの家に住み込んで看護をしていたというルイさんは、マジュの容体が安定している今は外に住んでいて、毎日午後だけカンバラ邸に通ってきている。
夕方に彼女が帰ったあと、もう一回マジュの部屋へ行こうか。
ああ、でもその頃には、ハルヒコ様があの部屋にいるかもしれない―――。
『お父様―――……!』
(……っ)
また「あの光景」を思い出しそうになって、私はあわててそれを打ち消した。
私にあれを見せたもの―――「逆流」は、最初の時以来起こっていない。
きっとあれが、二年間ため込んでいたもののガス抜きになったのだろう。
その後も治癒を行うたびに私はマジュの手を握り、その内側へ透明な手を伸ばすけれど、彼女はいつもおとなしく私を受け入れて眠っているだけだった。
治癒を行う側としては、当然そのほうがありがたい。
けれど……最初の時に見たあの光景はあまりにインパクトがあって、いまだに頭をちらついては私を悩ませる。


