自分の肉体が何か大きな衝撃を受ける、と思った時、人は無意識に受け身の体勢をとって自分をかばう。

心も同じだ。

耐えられないほどの苦痛を受け止めなければならなくなると感じた時、心は自分を守るために殻を作って中に閉じこもり、苦痛を感じまいとする。

事故で意識を失う、というものそれと同じこと。

マジュは転落事故で肉体にダメージを受け、その痛み苦しみを感じまいとして、心の周りを頑丈な殻でおおった。

肉体が回復してくれば、普通なら心もそのことに気づいて、そのうち殻の中から出てきてくれる。

けれどたまに、肉体の変化に気づけないほど厚く殻を作ってしまい、そこから出てこれなくなる人がいる。

自分を守ろうとする心は、殻に上にさらに殻を作っていく。

意識の戻らない期間が長いほど、その人の心の殻は何重にもなって―――


マジュの心は、まさにそんな、何重もの殻をかぶってしまっている状態にあった。