「マジュ様の負担にはならなくても、あなたの負担にはなるでしょう。今日は午前中からずっと治癒をしていると聞きましたよ」

パンツスタイルのナース服の腰のところに手を当てて、彼女が私を見下ろしてくる。


彼女の名前はルイさん。


マジュの世話をしている看護婦さんだ。

歳は40くらいだろうか。

頭上できりっと一つにまとめた黒髪と凛とした瞳が「できる女」といった感じで、実際とてもきびきびと動く。

ただ口調が淡々としているせいで、どこか冷たい印象の女性だった。


「〈グリーン〉の力を使うには、精神力と集中力が必要なのでしょう?気の張りすぎはよくありません」

「でも、これくらい……」

「私はマジュ様のお世話だけでなく、あなたの体調にも気を配るようにと旦那様から頼まれているんです。さあ、リイナさん」

促されて逆らえず、私はしぶしぶマジュの冷たい手をはなした。





***




私がカンバラ邸にやって来てから、一週間が過ぎた。


初めは役に立たなかったらと不安もあったけれど、幸運なことに、マジュを目覚めさせるためには私の〈グリーン〉の能力が有効だった。

マジュへの治癒は、今のところ順調だ。

彼女は肉体的にはもう事故の衝撃から回復している。

ならなぜ目覚めないのかというと、原因は、マジュの心が硬い殻の中に閉じこもってしまっていることにあった。