きくちゃんからこんなメッセージが届くなんて珍しい。家族関係や業務連絡以外で誘われるなんて久しぶりだ。今朝のこと、気にしてないような顔をしていたのに。
「……わ、わたしが変なこと言ったから、多分ちゃんと断ろうとして誘ってくれたんだよ。きくちゃん、そういうの、なあなあにする人じゃないと思うし」
うん、そうだ。ずっと見てきたからわかる。
きくちゃんは、応えられない好意にもきちんと付き合うタイプだ。敢えて冷たく接する黒瀬くんとは正反対の優しさ。どちらも間違っていない、正当な優しさだ。
「そーかなー、オレは相当動揺してると思うケド。ね、柚はどー思う?」
「……」
黙る黒瀬くん。それもそうだ。自分の好きな人が自分以外の好きな人に告白した話なんて聞きたくないはず。
居た堪れない。黒瀬くんのこと見れないよ。自分の気持ちに整理をつけるためとはいえ、この1週間、黒瀬くんと仲良くなるのを了承したのはわたしなのに。
「あーダメだこりゃ、なんか考え込んでるっすね。とりあえず昼メシたべよーナツぱいせん」
「う、うん……」
「で、なんて返事するんすか? ソレ」
「ええっと、」
きくちゃんからのメッセージ。どうしよう。もちろん、行かないなんて選択肢はない。しっかりフラれて、長年の片思いに終止符を打つべきだと思う。
でも。というか。帰りは黒瀬くんと約束している。1週間、昼と帰りは黒瀬くんと過ごすと決めたのだ。
チラリと黒瀬くんをみると、目があってどきりとした。さっきとは違う、まっすぐした視線。
「……いいですよ。菊池先輩のとこ、行ってください」
「えっ」
「さすがに俺も、それを断ってなんて、言えないです。……言える立場じゃない、し」
うっ。そんなに傷ついた顔で言われると、自分が本当に悪いことをしているみたい。いや、冷静に考えればわたしって本当に最低なことをしてるけどね?!
「その代わり」
「うん?」
「─────俺もついていっていいですか、放課後」



