シトラス・セブンデイ


カリンくんが目を丸くしてわたしを見る。それもそのはずだ。だって、黒瀬くんはともかく、カリンくんはわたしがきくちゃんを好きなことを昨日知ったところだし。


「エーット、……本気っすか?」

「う、うん、勢いあまって……」

「昨日彼女できたって言ってたのに?」

「ウッ……そうだけど……」

「てゆーか菊池先輩、相当揺れるんじゃないすか、それ」


いや、そんなことはない。

今朝だって、わたしの言葉に何も答えないきくちゃんをおそるおそる見上げると、驚くわけでもなく、断るわけでもなく、ただ前を向いていたのだった。

わたしはそんな沈黙が耐えきれなくて、『そ、それだけだから、では、!』と謎の別れの言葉を吐いて、学校までダッシュ。その後のことはよく覚えていないけど、きくちゃんは追いかけてくることも後ろから声をかけてくることもなかった。


「なんつーか、ナツぱいせんってホント、男心くすぐるのうまいっすねー……」

「なにそれ……」


そんなわけあるか! だとしたら今こんなに苦労してないんだもん。学校イチの王子に気に入られ、大好きな幼馴染に勢い余って告白し、あり得ないことの連続で頭がパンクしそう。


「だってほら見てくださいよ、柚の顔ー」

「えっ?」


カリンくんの声に後ろを振り向くと。ひどく顔を歪めた黒瀬くんが立っていた。あれ、前にもあったなこんなこと。わたしはいつも黒瀬くんのこと不機嫌にさせてるかも。


「ほら柚、不機嫌になってないでこっち来たらー? どーせ途中から話聞いてたんだろー」

「……聞いてたけど」

「く、黒瀬くん……」

「……俺が昨日、告白したら? とか言ったからですよね」


ゆっくりと、窓際に座るわたしとカリンくんに近づいてくる黒瀬くん。

黒瀬くんの言葉のせいかと言われると、全く違うとは言い切れない。だって今朝、確かに昨日の黒瀬くんの言葉が頭に浮かんだから。

でも、前のわたしだったら、きっと言うことができなかった。きくちゃんの前だと息を吸うのもやっとなくらいで、がんばって笑顔を作っていた。今日わたしがきくちゃんに思わず『好きだった』と告げたのは、ある意味、自分の気持ちに決着をつけるためだと思う。

それは、黒瀬くん、きみにむきあうためだよ。なんて、本人の前でそんなこと、言えやしなくて。