◇
放心状態、というのはこういう時に使うのかも。
「ちょっと、アンタいつまでそんなポケッとした顔してんの」
4限目終わり。昼休憩になったのに席から動かない私を見かねてタマキが一発ぱしんっと私の頭を叩いた。手を上げなくたっていいのに! タマキのバカ。
「うっタマキーー」
「ちょっと鬱陶しいから近寄らないで。あと、そろそろ行かないと黒瀬がまた教室まで来るわよ」
それは一番困る。黒瀬くんがわざわざ2年の教室に現れたらまた騒ぎになってしまう。ただでさえ私と黒瀬くんの噂が後をたたないというのに。
わたしは渋々ふたつお弁当を抱えて空き教室へと向かったのだった。
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「あれ、ナツぱいせん、まーた顔色わるいっすねー」
ガラリと空き教室の扉を開けると。そこにいたのは黒瀬くん……ではなく、カリンくんだった。開けたドアを閉めようとすると、「ちょっとー、柚じゃないからってその反応はなんですかーサイテー」と拗ねた声がしたので渋々教室に足を踏み入れた。
今日も今日とて片耳ピアスに前髪はピンで止めている。紫のTシャツをブラザーの中に着ているけれど、うちの高速ってこんなにゆるかったっけ? カリンくんだから許されてる可能性あり。
「……黒瀬くんは?」
「それが、運悪く担任に呼び出されちゃって。遅れてくるっていうのを伝言頼まれたんでオレが来ましたー」
「律儀……」
「ホントね。てゆーか、連絡先くらい交換したらどーなんすか? いちいちオレが伝言しにくるものだるいしー」
そういえば黒瀬くんの連絡先、未だ知らなかったな。聞かれてないから答えてないだけなんだけど……。
何も言わないでいると、カリンくんがニヤリと笑って携帯を差し出してきた。見ればメッセージアプリのQRカードがうつっている。連絡先交換しようということだと思う。
まあ、別にそれくらいいいけど。自分のスマホでそれを読み取る。カリンくんの連絡先とか知らなくても別にいいんだけどね。
「やった、ナツぱいせんの連絡先ゲットー」
「別にこれくらい、聞かれたら誰にでも教えるよ」
「ウワー、それ柚の前で言っちゃダメっすよー。あいつああ見えて独占欲強すぎるんで」
……それはなんとなくわかるかも。
「てゆーかナツぱいせん、これ、もしかして柚の分?」
じとっと、カリンくんがふたつあるお弁当を見ながら言う。うっ、その通りなんだけど、別に突っ込まなくたっていいのに。
「うん……一応」
「ふうん、ナツぱいせんってあの菊池先輩が好きなのに、思わせぶりなことするんすね」
「お、思わせぶりって……」
「こりゃ柚も諦めつかないわけだ」
あーあ、カワイソー、フるなら早くフッてあげればいーのに。カリンくんはそんなことを軽々言ってのける。
いや、確かに、その通りなんだけれど。カリンくんは何も間違ってないんだけれど。でも、そんなこと、わたしだってわかってるもん。
「……しっかりフラれたら、諦めつくのかな」
「そりゃそーでしょ。余程のM気質か、オレみたいな振り向いてもらえないと余計燃えちゃうタイプ以外はネー」
「だとしたら、わたしもそろそろ、フラれなきゃだよね」
「そーそ、しっかりフッてやってよ、んでオレとかどう……って、エ?」
カリンくんが目を丸くして私を見た。それもそうだ。予想外だよね、こんな返答。
「カリンくん、わたしね、今日の朝……きくちゃんに告白、したの」
放心状態、というのはこういう時に使うのかも。
「ちょっと、アンタいつまでそんなポケッとした顔してんの」
4限目終わり。昼休憩になったのに席から動かない私を見かねてタマキが一発ぱしんっと私の頭を叩いた。手を上げなくたっていいのに! タマキのバカ。
「うっタマキーー」
「ちょっと鬱陶しいから近寄らないで。あと、そろそろ行かないと黒瀬がまた教室まで来るわよ」
それは一番困る。黒瀬くんがわざわざ2年の教室に現れたらまた騒ぎになってしまう。ただでさえ私と黒瀬くんの噂が後をたたないというのに。
わたしは渋々ふたつお弁当を抱えて空き教室へと向かったのだった。
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「あれ、ナツぱいせん、まーた顔色わるいっすねー」
ガラリと空き教室の扉を開けると。そこにいたのは黒瀬くん……ではなく、カリンくんだった。開けたドアを閉めようとすると、「ちょっとー、柚じゃないからってその反応はなんですかーサイテー」と拗ねた声がしたので渋々教室に足を踏み入れた。
今日も今日とて片耳ピアスに前髪はピンで止めている。紫のTシャツをブラザーの中に着ているけれど、うちの高速ってこんなにゆるかったっけ? カリンくんだから許されてる可能性あり。
「……黒瀬くんは?」
「それが、運悪く担任に呼び出されちゃって。遅れてくるっていうのを伝言頼まれたんでオレが来ましたー」
「律儀……」
「ホントね。てゆーか、連絡先くらい交換したらどーなんすか? いちいちオレが伝言しにくるものだるいしー」
そういえば黒瀬くんの連絡先、未だ知らなかったな。聞かれてないから答えてないだけなんだけど……。
何も言わないでいると、カリンくんがニヤリと笑って携帯を差し出してきた。見ればメッセージアプリのQRカードがうつっている。連絡先交換しようということだと思う。
まあ、別にそれくらいいいけど。自分のスマホでそれを読み取る。カリンくんの連絡先とか知らなくても別にいいんだけどね。
「やった、ナツぱいせんの連絡先ゲットー」
「別にこれくらい、聞かれたら誰にでも教えるよ」
「ウワー、それ柚の前で言っちゃダメっすよー。あいつああ見えて独占欲強すぎるんで」
……それはなんとなくわかるかも。
「てゆーかナツぱいせん、これ、もしかして柚の分?」
じとっと、カリンくんがふたつあるお弁当を見ながら言う。うっ、その通りなんだけど、別に突っ込まなくたっていいのに。
「うん……一応」
「ふうん、ナツぱいせんってあの菊池先輩が好きなのに、思わせぶりなことするんすね」
「お、思わせぶりって……」
「こりゃ柚も諦めつかないわけだ」
あーあ、カワイソー、フるなら早くフッてあげればいーのに。カリンくんはそんなことを軽々言ってのける。
いや、確かに、その通りなんだけれど。カリンくんは何も間違ってないんだけれど。でも、そんなこと、わたしだってわかってるもん。
「……しっかりフラれたら、諦めつくのかな」
「そりゃそーでしょ。余程のM気質か、オレみたいな振り向いてもらえないと余計燃えちゃうタイプ以外はネー」
「だとしたら、わたしもそろそろ、フラれなきゃだよね」
「そーそ、しっかりフッてやってよ、んでオレとかどう……って、エ?」
カリンくんが目を丸くして私を見た。それもそうだ。予想外だよね、こんな返答。
「カリンくん、わたしね、今日の朝……きくちゃんに告白、したの」



