黒瀬くんの瞳が熱っぽくなったのがわかって、あ、これはまずいかも、と思った矢先。いきなりガバッとソファから立ち上がって、リビングの椅子へと足を進める黒瀬くん。
「え、ーっと……」
「ごめんなさい、流石に言い過ぎました」
「いや、謝ることでは……」
「先輩があまりに無防備だから、そろそろ帰ります、自制効かなくなる前に」
窓を見ると、確かに曇ってはいるけれど雨が止んでいた。
もう少し一緒にいたかったかも、とか、そんなことを思ってしまう私はおかしいかもしれない。
「ていうか、ナツ先輩、わかりました」
「えっ?! わかったとは、、」
「菊池先輩に、気持ち伝えませんか?」
「え……」
「……なんて、冗談です」
「へ、変な冗談言う」
「でも、気持ちを伝えて諦めがつくこともあると思うんですよね」
どの口が言うんだ。
というか、黒瀬くんにはわたしがきくちゃんへの気持ちを捨て切れていないこと、バレバレみたい。昨日あんな姿を見てしまったし、彼女ができたって直接聞いたのに、私って本当に諦めが悪いよね。
私が考え込んだ顔をしていたからか、いつの間にか黒瀬くんが近くはやってきて、少し腰を曲げて私と視線を合わせた。その綺麗な顔に、またどきりと胸がなったりして。
「あと4日で、俺のこと好きになってね、先輩」
近くに寄った黒瀬くんの香りがふわりとかおる。
今日は、シトラスの香水じゃない。同じシャンプーの香りだった。



