「そんなに前から、知ってくれてるなんて思わなかった……」
「勝手に見てただけなので、ナツ先輩は知らなくて当然ですよ。それに、俺、中3で一気に身長が伸びたから、それまで160ぐらいだったし」
そっか、黒瀬くんが中3のときには、私はすでに卒業さて高校生になっていたもんね。頭のいいきくちゃんと同じ学校に行きたくて、あの時は必死に勉強したんだった。
中学2年までの背の低い黒瀬くんを想像するとなんだか可愛く思えてしまう。きっと今よりも幼い顔をしていたんだろう。今は美青年という感じだけれど、きっと美少年だったんだろうなあ。
あれ、でも。
「ちょっとまって!」
「はい?」
「で、でも、中学1年から好きだって言うけど……黒瀬くん、何回か彼女いたことあるよね?」
そう、それは今日、カリンくんが言っていたこと。きくちゃんを好きなこと以外恋愛については未経験すぎる私にとって、彼女がいたことがあるというだけで圧倒的強者に思えてしまう。いや、黒瀬くんの容姿を考えれば当たり前なんだけど! むしろいない方がおかしいんだけど!
「それカリンから?」
「えーっと、うん、今日たまたま廊下で会って……」
「まあ何回か、押しに負けて付き合ったことはありますね、」
やっぱり本当だったんだ。
「そっ、そっか、まあ黒瀬王子ともあろう人が彼女がいたことないわけないしね……」
「いや、でも好きになった人はナツ先輩だけですよ?」
「はい???」
「叶わない片思いってわかってたので、忘れる努力しようと思って何人かの告白に頷いたことはありますけど……結局どれもすぐ別れましたし。他の人を好きになるとか、やっぱり無理でした。だから、ナツ先輩と同じ高校にしたんだし」
何その理論。私にはわからないよ。ていうか、黒瀬くんを好きだった女の子たちが哀れすぎるのでは……。
そんなことを思うと同時に、なんだかもやもやする気持ちもあったりして。だって、ずっと見てた、とか、ずっと好きだった、という割には、しっかり恋愛してきてるんだもん。
「でも、いたのは本当じゃん……」
「え?」
「く、黒瀬くん、なんか慣れてるもんね。手もサラッと繋ぐし、好きとか普通に言うし、なんか余裕そうだし、」
「え、なんですかそれ、……嫉妬?」
「ち、ちが!」
「勘弁してください……」
黒瀬くんがソファの隣に座る私からずりっと距離をとって、右手で頭を抱えた。やばい、わたし、子供みたいなこと言ってしまったかもしれない。
そして、流石に引かれたかも、こんなことを言ってしまって。
「ご、ごめん黒瀬くん、思わず変なことを……」
「ずるいです先輩」
「え、」
「俺のこと好きじゃないくせに、思わなぶりなことばっかして」
「なっ…」
「余裕なんていつもないですよ、今だってずっと理性と戦ってる」
「え」
「好きな人とこんな近くにいて、同じシャンプーの匂いがして、……欲情しない男がいるとでも思ってるんですか」
「そんな」
「先輩のことが好きだから、我慢してるんですよ、全然わかってない」



