シトラス・セブンデイ




「ええ、あれ、黒瀬くんだったの?!」

「やっと思い出しました? あの時の蜂蜜レモン、美味しかったです」

「きゃー恥ずかしい……、私お節介だったよね……」

「いや、だいぶ、やられました」


だいぶやられたって、何それ。

黒瀬くんをみると、ほんのり頰を染めて目を逸らしている。なに、その、かわいい反応!


「それから、試合とか練習試合で先輩の学校に行くたびに探して、いたら勝手に目で追ってました。最初はこの感情なんだろうってわからなかったけど」

「う、うん……」

「中3になって、ナツ先輩が卒業しちゃって会えなくなって。それでもずっと気になって仕方なくて、同じ高校受験して」


黒瀬くんが高校を選んだ理由が自分だなんて、この世の中はどうなってるんだろう。本当に漫画か映画か何かの世界にでも迷い込んでしまったのかな。私以外の誰かを好きになれば、誰だって黒瀬くんのこと、好きになるはずなのに。


「入学して、先輩と同じ高校になって……。見かけるたびに、ずっと、目で追ってました。一回しか話したことないのに変ですよね。でも、なぜかいつも先輩のことを見つけてしまって」

「う、恥ずかしい……」

「……それで、気づいたんです。見つめる先輩の視線の先に、いつも菊池先輩がいること」


あ、そうか、それで、黒瀬くんには全てお見通しなんだ。わたしがきくちゃんを好きなことも、きくちゃんに好きな人がいたことも。

私の恋を、第三者目線で、ずっと見ていてくれたんだ。


「菊池先輩って鈍感ですよね」

「う、そ、そうだよね……」

「ナツ先輩の視線、あまりにもわかりやすいのに」

「うわーやめてやめて、言わないで!」

「明らかに脈なしだし、菊池先輩がマネージャー好きなことも丸わかりだし」

「うっ……」


そんなに立て続けに人の心を刺さなくても!!
でも図星すぎて何も言えない。側から見ても菊ちゃんの私への態度は脈なしだし、マネージャーが好きなこともずっと丸わかりだった。


「でも、ずっと、菊池先輩のこと追ってる目線が、健気で、まっすぐで」

「……」

「その視線の先が自分になったらいいのに、って、いつしか思うようになって」


あ、どうしよう。また、黒瀬くんの瞳に捕まる。逃げられない。


「……それで、自分がナツ先輩のことが好きだって、やっと気付きました」


うっ、どうしてこんなにストレートなの。黒瀬くん。
というか、そんなにずっと前から見ていてくれたなんて知らなかった。

どくどくと心臓がなる理由は、真っ直ぐなその想いに応えられないからなのか、はたまた刺さっているからなのかわからない。


「気持ち悪いかもですけど……この高校選んだのもナツ先輩がいたからです。ずっと、ナツ先輩のこと、好きだったんです」


捉えられる。私は何も返すことができない。