シトラス・セブンデイ




軽くシャワーを浴びて、早く黒瀬くんもいれなきゃと髪も乾かさず急いでリビングに戻った。窓の外はまだ大雨だ。スマホで天気予報を確認するとあと1時間はやまないみたい。



「ごめんね黒瀬くん待たせて……シャワー使って」


突然リビングに現れて声をかけたからか、黒瀬くんの背中がビクッと揺れて、椅子に座りながら顔を上げた。その綺麗な目を見開いてわたしを凝視したから、こちらまで驚く。

待たせたから怒ったかな。


「……無防備、です」

「え?」


想像以上に低い声が落ちてきてびっくりする。黒瀬くんはいつも優しい声で話しかけてくれてるんだな、と思う。

それから、私からぱっと目を離す。


「いろいろまずい、さすがに」

「えーっと? 何が?」

「……いいですわかんなくて、とりあえず俺が戻ってくるまでに髪乾かしておいてください、あと短パンやめてください、長いの履いて」

「あ、ご、ごめん!急いでたからこんなお見苦しい姿をお見せして……」


言われてから気づく。確かに急いで出てきたせいで髪は濡れたままだしTシャツに短パンというラフすぎる格好。

最悪だ。こんな美しい黒瀬くんに私の見苦しすぎる家着を見せてしまった。一気に顔が青ざめていく。この世のオワリだ。ていうか、私って女としてどーなの? さすがに黒瀬くんもこれには引いたかも。


「違います、俺が我慢できなくなるとまずいから」

「えっ、何を?!」

「……天然タラシ」


ど、どこが?! というか黒瀬くん不機嫌すぎないか?! 慌てて長ズボンを探しに行こうかとあたふたしていると、はあ、とひとつため息をついて黒瀬くんがゆっくり近づいてきた。

雨に濡れた髪がいつもと違ってへたっとしていて、その艶やかな雫が心臓を捉える。なに、どうして雨に濡れただけなのにこんなに色気があるの。イケメン恐ろしいよ。

黒瀬くんがあまりに綺麗すぎてその場を動けずにじっと見つめていると、わたしの目の前まできた黒瀬くんにむぎゅっと頰を掴まれた。


「く、くろへふん?!」

「……俺以外にこんな姿見せないでくださいね、絶対」


不機嫌そうに私を見つめてそう言うと、颯爽とリビングを出て行った。わたしはその背中をしばらく目で追って、やがて力尽きてへなへなとその場に座り込む。

……黒瀬王子の破壊力、凄まじい。飲み込まれるかと思った、美貌とやらがこんなにも恐ろしいとは知らなかった。さすがにずるいよ、黒瀬くん。